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ラボ長発信No.10 (2002.11.17)

技術系ベンチャーの立ち上げマーケティング

ラボ長の前田です。皆さんお元気ですか。今日はマーケティングの話です。

 研究開発型ベンチャーの死命を決するのは、技術よりもマーケティングである、とよく言われています。技術の良さよりも、マーケティングの良さが、その技術が生きるか死ぬかの分かれ目になることが多いです。ソニーのベータマックスが松下・ビクターのVHSに負けたのもまさにその例です。

 ベンチャー企業に限らず成長期にある企業でもマーケティングは技術以上に大切です。ソニーのVAIOが後発にもかかわらずPC業界で伸びているのは、技術ではなくマーケティングです。マイクロソフト、任天堂、ソフトバンクのコンピュータゲームの戦いも、技術は二の次で、ビデオ同様コンテンツのフォーマット戦争です。プレステIIのエモーショナルエンジンやソフト制作ツール等の技術も大事ですが、優秀なソフト制作者をどう取組みヒット作品を出すか、在庫をどう減らすか等のほうが競争を支配します。

 MBA等でマーケティングを勉強すると、すぐ出てくるのはマーケティングの4Pです。 Product, Price, Place (Sales Channel), Promotion、商品戦略、価格戦略、販路戦略、販促戦略の4つです。VAIOの成功は、オーディオ・ビデオ(AV)を取り込む(Input, Output)商品コンセプトの戦略と斬新なデザインによる商品戦略、ソフト制作会社を任天堂のように拘束しないで、柔軟に低いマージンで囲み込んだ一種の販路戦略によると思います。アスクルの成功もFAXやインターネットを利用した半直販の販路戦略が中心です。

 ただ、このVAIOやアスクルのように、最近のITによる情報化社会では4Pでは十分説明しにくいケースが出てきています。ビジネスモデルが4P以上に重要になってきています。マーケティング以外の経営戦略の分野でも、例えば過去に重要だといわれていた多くの経営戦略も、ビジネスプランがまずければ役に立ちません。ビジネスプランというのは、一言でいうと「儲ける仕組み、客を集める仕組み」です。これについては又いつか解説します。

 シリコンバレーで大成功した研究開発型ベンチャーであるヒューレットパッカードの創設者の一人であるパッカード氏は、社長当時マーケティングを重視した人で「マーケティングは大切すぎて、マーケティング部門の人には任せておけない」と名文句を吐いています。MBAで必ず読まされるハーバード・ビジネスレビューの著名な論文であるレビット教授の「マーケティング・マイオピア(近視眼)」は、後日製本時に「マネジメント・マイオピア」と変更されています。以上の二つの話はマーケティングは経営と同じであるという証拠です。

 少し話が今日の本論とそれましたが、ベンチャーの初期マーケティングで一番大切なのは、ファースト・カスタマー(初期顧客)をつかむことです。革新的な技術製品は、その信頼性への不安もあり、まず誰も買ってくれません。いわんや名も無いベンチャー企業の製品は。多くの技術投資で資金が欠乏していて何とか販売に結び付けたいが、売上ゼロが続くのが技術ベンチャーの常で、倒産につながっていきます。特に日本の企業は先例や実績がないと購入してくれません。

 ソニーも創業当時は無名で販売チャネルに商品を流せず、アメリカで成功させてから日本に跳ね返させる有名な「ミラー効果」を利用したことで知られています。京都のハイテクベンチャーで昨年上場したサムコ・インターナショナルの辻理社長は、ソニーと同じ手口で、まず欧米の大企業を攻めて、それから日本に導入する手法をとっています。そのために小さなベンチャーの時点で欧米に研究所を設立しています。

 最近のハイテクベンチャーは、開発初期の時点で大手企業と対等に連携し、その企業にファーストカスタマーになってもらっています。WCDMA方式の新世代携帯電話用の節電用LSI開発で数人の社員しかいない鷹山がNTTドコモと対等に連携して成功した話は有名です。ザインの飯塚社長は創業初期サムソンと組み成長しました。メガチップスの進藤社長は任天堂と、IIJの鈴木社長はソニーとトヨタと。ラティステクノロジーの鳥谷社長はトヨタと組んでいます。

 大企業は、その官僚的な風土からは出てこない革新的な技術を探しています。ベンチャー企業は大量に買ってくれる初期顧客を探しています。


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