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ラボ長発信No.8 (2002.7.28)
社内ベンチャーの新概念 「スピンオフ型社内ベンチャー」
今回は、「社内ベンチャーの新概念」です。以前、社内ベンチャーを取り上げる予告をしたときに、社内ベンチャーで苦労し、本社管理部門の管理志向に懲りた方々を中心に活発なMLの動きがありました。本当に日本の社内ベンチャーは、問題が多くうまく行っていないようです。
その様な前提の中で、7月11日午後に、東京の日本経団連 新産業・新事業委員会 企画部会(鳴戸道郎富士通特命顧問が部会長)で、東京の社会経済生産性本部のTiM(http://www.tim-japan.org/)コーポレートベンチャー部会のメンバー3人と「社内ベンチャーの新概念」を提言してきました。
「管理志向の"ベンチャーごっこ"をやめて、新規事業創出可能なスピンオフ型社内ベンチャーへの新概念」という触れ込みで行きましたので、大企業のトップや管理職のリアクションがどのようなものか少し不安でしたが、意外と反応はポジティブでした。
社内ベンチャーの成功例がほとんど無いのに対して、企業を脱藩したエリートエンジニアによるスピンオフベンチャーは、この数年、ザイン、インクス、メガチップス、リアルビジョン、フューチャーシステム、セラーテム、サイボウズ等、多くの成功例が出始めている。その原因は何か?スピンオフベンチャーは、ベンチャーの本来の性格である「自由と責任・リスク」を持ち、思い切ってチャレンジできるからである。これに対して社内ベンチャーには、ベンチャーの最重要要素である自由が与えられていない。
自由とは、会社の各種管理規定、決定プロセスからの自由である。日本の社内ベンチャーは、どこまで自由なのか、将来ベンチャーを、子会社にするのか、どうするのかが不明確で、本社の管理部隊も自己防衛のために管理せざるを得ない状態になっている。その為多くの社内起業家がフラストレーションを持ち、結果として企業を飛び出していくケースが多い。企業を脱藩すると、元の企業から村八分的な扱いを受けやすく、親企業もスピンオフベンチャーも傷だらけとなり疲れてしまう。
社内ベンチャーは、管理管理で殺してしまうよりは、スピンオフさせて育てるべきである。離陸までは資源や資金のサポートをして、IPO(株式公開)をして飛び立つときには、親企業の権限を最小限(33%以下、なるべく数%)にすべきである。社内ベンチャーの初期の時点で、近い将来スピンオフして親企業から完全に離れていってよいという「スピンオフ予約権」を与え、本社管理部門による干渉を最小限に留めるべきである。子会社として鎖でくくらなくとも、鮭ではないが、子供のときの恩義は、大きくなっても忘れないものであり、連携等で元の親元に戻ってくるものである。これは日本的経営のよいところである。もちろん競合企業や異業種企業とも連携するであろうが、だから成長するのだ。
ソニーのコンピュータゲームやソネットのように、当初は企業の新規ビジネスとして組織が作り出した事業ではなく、たまたまある特定の個人の興味で始めた社内ベンチャービジネスが、途中で企業のコアビジネスとして取り込むときは、その社内ベンチャーの創業者を事業部長や子会社の社長として迎えればよい。それ以外の社内ベンチャーには、「スピンオフ予約権」をあたえて、独立させIPOを目指させるべきである。IPOで創業者がキャピタルゲインを挙げてこそ、優秀な人材を輩出する先進的な企業として企業イメージが向上し、いつの日かは自分もと、社員の志気も向上する。
IPOの見込みがない企業は、社内ベンチャーとしては清算するか、もしくは早くスピンオフさせるべきである。スピンオフ前に社内ベンチャーで失敗した社員は、企業に戻れるが、失敗することで十分な制裁(リスク)を受けていると考えて良い。優秀な人材であれば又チャレンジするであろう。
ハーバード大学のクリステンセン教授が5年程前に出版した「イノベーションのジレンマ」は、日本でも読まれ始めたが、彼は多くの事例を挙げながら、毎年の売上・利益向上のために大事なお客のカスターマーサティスファクションを追い続ける大企業は、オペレーショナルインプルーブメント的なイノベーションに追われて、当初はニッチな市場である破壊的な技術革新には手が出せない。ベンチャーは、果敢に大企業が入らないこの分野に取り込んでくるので、歴史上ほとんどの革新的な技術革新はベンチャーが実現している、と論じている。
私は石垣理論と呼んでいるが、お城の城壁は.大きな岩と小さな岩が絡み合ってこそ、崩れないものである。大きな岩だけでは崩れてしまう。大きいのも小さいのも共に必要である。ベンチャーは大企業がファーストカストマーになってくれてこそ生き延びていけるし、大企業は、ベンチャーでしかできないニッチ市場での革新的技術と連携することによって、常に革新性を保っていける。大企業とベンチャーは連携によってWin-Winの関係が保てるのである。
日本の数少ない社内ベンチャー成功事例(10年くらいで、数百億、数千億の年間売上で、企業の本業の助けとなる)として、三菱商事のネットワンやソニーのSCEを挙げることが出来るが、それらは加山氏や久多良木氏のような技術と経営がわかる天才的な豪傑がいたからであり、彼らは自由が無くとも勝手に何でも作り出すであろうから、参考にはならないし、またその様な人はめったにいない。
比較的成功しているといわれている富士通の社内ベンチャーは、我々が提案している新概念に近いスピンオフ型社内ベンチャーである。希望者がスピンオフして擬似社内ベンチャーを起こしているが、今後は優秀な人材を意識的にスピンオフさせて、従来では内部の新規事業テーマになるようなものにチャレンジさせてもいいのではないか。
NECは、この4月から商法で認められた新株予約権をうまく利用して、スピンオフ型社内ベンチャーを実現しているといえる。(2002.4.16 日経新聞 ファブソリューション株シ導体VB 新株予約権で研究支援確保、参照)
ソニーは、スピンオフ型社内ベンチャー的に、社内で新規事業を運営している。アイボやコンピュータゲームや私が初代事業室長を勤めた非接触ICカードシステム(JRのスイカとして利用)のように、多くの社内ベンチャーは、成功するとコアビジネスに組み込まれている。これは、リクルートや三菱商事同様、企業文化自体が自由闊達なため可能なのであろう。これらの企業からは、本来のスピンオフベンチャーが多発しているが、企業はこれら脱藩者と良い関係を常に結ぶよう心がけ、それらベンチャーとうまく連携している。
社内ベンチャーを、単にブームとしての企業文化活性化のための手段としてのお祭りに使うのは、当然良い結果が出ないから企業にとってかえって企業文化を悪化させることになる。中途半端な子会社群を社内ベンチャーで作っても、ほとんど意味が無い。本来の社内ベンチャーの目的を再認識するべきである。
驚いたことに、我々の発表の2日前に、NEC西垣社長は、ベンチャーが育つ条件は何ですか?の新聞記者の問いに対して「日本では人材が大企業に集まりすぎている。何万人もの社員が一つの企業で働いても個人の能力を引き出すのが難しくなってきている。優秀な人材を外に出してベンチャーで活躍させて、出資の形で支援し、お互いの利益とする。」と述べている。(2002.7.9朝日新聞 知的財産立国、参照) まさにこれは「スピンオフ型社内ベンチャー」「スピンオフ革命」「大企業とベンチャーの連携」の奨励である。
「管理志向のベンチャーごっこから、スピンオフの奨励と活用によるIPO志向型社内ベンチャーで、日本の産業活力を取り戻そう」と日本経団連に提言したパワーポイント資料を当ラボのウエブに載せておきますので、ご覧下さい。多くの皆さんのご意見(賛成、反対)をMLで待っています。
<完>
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