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土佐日記
生まれて初めて高知に来てはや1年。東西および北は山に囲まれ、南は太平洋を取り込むような地形の高知は、独自性が強くなかなか面白く楽しいところである。紀貫之が数ヶ月かけて京に船で戻ったのと違い、大学の研究室から20分で飛行場に着き、60分で羽田に着く。東京も近い。月数回は、科技庁の研究所へ行ったり、東京の学生とのゼミを持つ。講義は土日に社会人学生相手で、東京、大阪教室を加えたTV会議方式である。
大学の近くにひなびた温泉があり、研究室から歩いて5分である。温泉から緑に囲まれた蒼い川を眺めながら思索し、再び研究室に戻りパソコンに向かう。部屋中に温泉のほのかな香りがただよう。遠くの山間に東京行きの飛行機の飛び立つのが見える。学部の若い学生が尋ねてくる。35
年前の自分が思い出される。
東京からきた先生と言う事で、ラジオのトーク番組や講演会にも駆り出される。地元の新聞にもいろいろ書かれる。あまり悪いことはできない。クリーニングやさんに行っても、温泉に行っても先生、先生と呼ばれる。その分東京に行ったときは、羽を伸ばす。
地酒はうまい。かつおのたたきは最高。トマトもうまい。土佐の深層水で作った豆腐は絶品。沖で取れる鯛の塩焼きは、私の得意料理の一つとなった。
桂浜の波しぶきを肌で感じ、遠い竜馬の思いを感じる。土佐から世界をにらんでみるのも、おつなものである。
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