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風に舞う

フォーラム21 2期前田昇
(ソニー)

 毎年早春の楽しみは、白木蓮のつぼみの膨らみを遠くから眺めることと、紋白蝶を始めて見つけることだ。この楽しみを知ってもう20 年近くになる。白木蓮の方はどこに咲いているかだいたい知っているので、毎年まだかまだかとその場所をとおるたびに眺めればいいのだが、紋白蝶の方はどこで会うかが判らないので、出会ったときのびっくりした喜びは大きい。いつも2月の私の誕生日がくるともうすぐだなと期待したりする。

 15年ほど前には、カリフォルニアの公園で見た。今年は出張中の香港で見た。今年は特に劇的だった。3月初めに香港のフェリーに30分ゆられて西部地区の市電のようなものに乗った。3っ目くらいの駅の名前が「胡蝶」と書いてあった。一瞬例の楽しみを思い出した。もう暖かいし名前も名前だしきっとこの近くで今年初の紋白蝶が見られるかもしれないと思った。急ぐ旅でもなかったので途中下車した。電車が去って数歩歩いたら、いたいた紋白蝶が。うれしくなった。当たったと思った。香港の海辺のひなびた町で風と遊び舞う白い蝶は、私の今年初めての蝶だった。

 そのうちどこからともなくきたもう一匹の蝶と絡み合うようにして畑の中に消えていった。これが早春だとの実感がスーと込み上げてくる。私がウインドサーフィンと社交ダンスを好きなのは、こんなところからきているのだなと思う。ウインドサーフィンを始めてもう10年、社交ダンスを始めてもう5年になる。ウインドサーフィンは、鎌倉で出会った。社交ダンスとはドイツのデュッセルドルフでの出会いだった。

 両方ともその技術力は中の下くらいだろう。ゴルフでいうと100を時々きる、ボーリングでいうと170くらいのスコアだろうと思う。私の自慢はたまたまだけれども共にいい先生に就けたことだろう。ウインドサーフィンの先生は、ロスアンジェルスオリンピックの公開競技の日本代表選手だったとか。もう一人の女性の先生は、週間スパのグラビアで大きくとりあげられていた。共に日本でも指折りのいい先生だろうと思う。社交ダンスの方は、デュッセルドルフの日本人クラブの掲示板で見つけた先生で、ドイツ人と結婚している日本女性だった。日本に帰ってきてからもその先生には毎月会える。というのは、ダンスファンという雑誌に毎月「ドイツ便り」を写真入で数ページ書いているからだ。日本で習っている先生も、ダンスの基礎にうるさく、私のような横着な踊りを本格的なダンスのレベルまで引き上げてくれつつある。数人の先生に習ってみたが群を抜いて教え方がうまい。
ちよっと厳しいのが玉に傷だが、これくらい厳しくしてくれないとだめだろうとも思うので納得している。

 ウインドサーフィンも社交ダンスも欧州赴任中に欧州各地で楽しんだので、その気分や雰囲気をいい意味で今も引きずっていて楽しい。三浦海岸の裕次郎灯台から江ノ島に向かってセールしていると、エーゲ海でアフリカのカイロの方に向かってセールしたときの潮風を思い出す。愛車ベンツにウインドサーフィンを積んで、残雪のアルプスを越えてイタリアの湖に向かったときは、逆に日本での競技会に出るため、鳥取県の境港まで同じようにしてドライブしたのを思い出した。「我が物と思えば軽し屋根のボード」というところか。共に10時間以上の運転だけども、海の潮風が呼んでいると思うと苦にならない。

 社交ダンスは、ロンドンのハイドパークそばのアルバートホールでの世界選手権をたまたま見たのが、虜になった始まりだった。日本チャンピオンの田中英和ペアが世界5位に入賞し感激したものだ。大衆芸術で日本人が世界に伍して競っているのがうれしかった。その時撮った写真を大阪の練習所に後日届けたら、ペアだった奥様から丁寧なはがきをいただいた。日本に帰ってきたら、そのペアがNHK テレビで社交ダンス教育をやっていたので懐かしかった。先月武道館での世界選手権大会で、その田中氏が引退披露をダンスで飾ったのを見た。懐かしかった。でもパートナーはイギリス人女性に代わっていた。二人の結婚がその場で初めて発表された。趣味ではないプロの世界は厳しいもんだと思った。

 この前のアトランタオリンピックでは、ウインドサーフィンは正式種目となり香港の女性が初の金メダルをとり、香港最後の金メダルとして中国返還前のヒーローとなった。先月の小さな小さな新聞記事によると、日本人が男女ともアジア選手権で優勝し、次のシドニーオリンピック正式種目の代表権を取れそうだとことだ。

 蝶の様に風に舞いながら趣味を楽しみ、もう一つの楽しみである国際畑を連想することにより人生を2倍楽しみたいと思うこのごろです。

以上

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